法律学習ノート

原処分と裁決、どちらを訴える?――裁決固有の瑕疵と無効確認

原処分主義、裁決固有の手続瑕疵、行訴法10条2項、無効等確認の訴え36条を事例で整理。

目次

営業停止処分を受けて審査請求をした。棄却裁決が出た。ここで、営業停止処分そのものがおかしいと考える場合、原処分と裁決のどちらを争うべきだろう。

原処分主義という原則

行政事件訴訟法10条2項は、処分取消訴訟と裁決取消訴訟の両方が可能な場合に、裁決取消訴訟の中で原処分の違法を理由に取消しを求めることを制限している。これが通常、原処分主義と説明されるルールである。特別法が別の仕組みを定める例外には注意する。

申請内容や事実認定が処分時から誤っていた、処分をする法律要件を欠いていた、という争いは原則として原処分の違法の問題である。

一方、裁決をする機関が法定の委員構成・手続に違反したといった問題は裁決固有の瑕疵として捉える。

誰が・いつ・何を間違えたか

次の二つの事件を考える。

A:営業停止処分の時点で、必要な事実を確認せず処分をした。裁決はその処分を維持した。――違法を問題にする場面は原処分。

B:建築審査会が審査請求について判断する際、法定の除斥に当たる委員が裁決に参加した。――瑕疵が生じたのは裁決の手続。裁決固有の違法の問題である。

問題文の「誰の誤りなのか」を確認せず、裁決を経た事実だけで裁決取消訴訟と決めるのは危険だ。被告適格については行政事件訴訟法11条や関係条文を確認する必要がある。

裁決の不可変更力は国民の訴訟を禁じない

裁決庁が争訟裁断行為を自由に変更できないことと、当事者が法律上の要件を満たして裁決取消訴訟を提起することとは別だ。原処分と裁決の区別は、この理解にもつながる。

処分が無効なら取消訴訟は不要なのか

無効の処分が現実に争われる場合には、**無効等確認の訴え(行訴法36条)**が問題になる。取消訴訟の通常の出訴期間がそのまま課されるわけではないが、法律上の利益や現在の法律関係に関する訴えとの関係など、36条固有の要件を満たさなければならない。

「民事訴訟で争う余地が少しでもあれば無効確認は必ず不可」と短絡してはならず、判例のより直截的で適切な争訟形態かという考え方を事案に即して確認する。

訴えを起こしただけで行政処分の執行が当然停止されるわけではない(25条等)。争えるかと争っている間に効力がどうなるかは別問題である。

理解チェック

SELF CHECK · 2 QUESTIONS

まず自分で答えを考え、各カードを開いて結論と根拠を確認する。

Q1原処分時の事実誤認を、裁決固有の違法として主張できるか。
原則としてできない

行訴法10条2項の原処分主義。処分そのものの瑕疵と裁決の瑕疵は別。

Q2除斥対象の委員が裁決に参加した。瑕疵が属する段階は。
裁決段階

裁決機関による審理・裁断の手続で生じた固有の瑕疵。

条文:行政事件訴訟法3条、9〜11条、25条、36条など。